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店の中は、いくつもの背高の棚が雑然と立ち並び、まるで迷路のようになっていた。棚にはいくつもの商品が所狭しと詰め込まれており、時計の横に人形が合ったり、本棚の端に衣類がハンガーでかけてあったりと、何の規則性も感じられないそれらを目端で流しながら歩く。
人が二人ようやくすれ違えるほどの道幅を遅々として進んでいるだけでは、なかなか店内の全容を掴むことが出来ない。
いつ終わるとも分からない道のりをあてどなくさまよっていると、まるでもう時間が無限に進んでしまったかのような、はたまた店に入って少しも経っていないような、不思議な前後不覚に陥るのだった。
店に入った当初の目的も忘れ、BGMも何もない無音の店内をうろついていると、視界の端に煌めく何かを捉え彼女は立ち止まる。
「……何これ、趣味わる」
それは、無色透明な水晶によって形作られた人の頭蓋骨……いわゆる髑髏だった。手のひらサイズで、細部に至るまでよく研磨されているのであろうそれは、店内のおぼろげな照明の中にあってなお、怪しく煌めいている。
内心で嫌悪感を抱きつつも、手に取り眺めてしまうのはその不思議な魔性のためか。照明に透かして見ると、光が髑髏の中でいくつも反射し、まるで目の部分から光が飛び出しているように見える。外面だけでなく、中身にまで細かい細工が施されていることがよく分かった。
「作った奴は頭おかしいわね」
「ホントにねぇ、一体何を考えて作ったんだか」
自分以外の人の声がして、彼女はギョッとして横を見た。
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