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Prologue
東からの強い風にピンク色の花びらが地面ごとビュウっと一気に舞い上がる。
顔に当たる砂埃を避けるように、秀人はポケットから出した手を腕ごと顔の前にかざした。
舞い上がった花びらは、円を描くように回転しながらヒラヒラと降りてくる。そしてまた一気に吹き上げられ、今度はもっと高く舞い上がる。
散ったはずの花びらが返り咲くような華麗な光景に、周囲から「わぁ~」と声が上がる。
秀人は声につられて空を見上げた。
暖かい春陽に照らされた無数の花びらは、夜空一面に瞬く星のようにキラキラと輝いていた。
ふと、向かい側の校舎に目が止まった。壁に曲線を描くように取り付けられた螺旋階段の真ん中から、華奢な腕がそろそろと延び、ピンク色の星屑を弄んでいる。
秀人は消え入りそうな淡いその光景を
逆光に目を細めながら恍惚と眺めていた。
華奢な腕は青みがかった灰白色で、まるで陶器のような冷たさすら感じた。
反射したややピンク色の髪が風に誘われさらさらとなびく様子はやけに蠱惑的だった。
ーーーーーーあの髪に触れてみたいな。
衝動的に漏れ出た言葉に我に返った。
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