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はふはふ言いながら、肉を口に入れようとして、ふと思い出した。
「つーか、お前、……たま、たまゆらサンにかわいそうなこと言いつけんなよ」
「え? ああ、今日? 資料室、楽しかったか~? でも、あそこカメラあるからなぁ」
「ナニナニ、資料室って」
嫁、興味深々。
悪いが面白がられるようなことは何もない。
「佐代田さんは笑顔でサラっとかわすから、頼みにくいことはついつい玉響さんに頼っちゃうんだよなぁ、反省」
「エレベーターで、人食い鬼の檻ん中に放り込まれた生贄みたいな顔してたわ」
「堂道君……、お願いだから結婚以下略」
「そういえば、あの子、男いるぞ」
「え!? 玉響さんとそんな話したのか!?」
「まさか。前に、二人でいるとこ見た。ああ、お前も一緒に飲んでた時だけど、そん時、お前便所行ってた」
「そういう話題って今は気軽に触れられないからな。玉響さんもそろそろ結婚考える年齢かぁ。でも今の子って結婚では仕事辞めないしな。体制的にいますぐどうこうなるってことはないだろうけど。一応頭には入れとくわ」
「ま、早くて二、三年後じゃね? 産休育休」
「女だって別に休みたくて休むんじゃないんだからね!」
「別にダメだって言ってるわけじゃないじゃん」
『たまゆらサン』の育休産休が三年後だということを、俺も羽切もこの時知る由もなく。今季最後の鍋は煮詰まっていく。
#結婚まであと992日
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