結婚まで988日 #堂道と課長ズ

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結婚まで988日 #堂道と課長ズ

「あららー、あれはおたくら一課と二課のメンバーじゃない?」  会社帰り。  飲みに入った居酒屋。  部下がいる。  うちの課の尾藤、夏原。一課の飯田、佐代田サンと、あ、たまゆらサン。 「まあ、席離れてるからいいんじゃない?」と羽切。 「部下の仲がいいのはよきよき。たとえ酒の肴がお前らの悪口であってもな!」  ここぞとばかりに、嬉しそうに笑う嫌味な男、(むろ)は三課の課長。  ま、酒の肴は主に俺だな。  いーじゃないの。それで場が盛り上がるんなら、お安い御用ヨ。煮るなり焼くなりディスってちょうだい。 「おーい、君たち! 羽切課長が一杯おごるってよ?」  室が叫ぶと、ワー、と盛り上がる部下テーブル。  金で黙らす親、上司、ってな。 「なんで俺だけ?」 「だってお前らの課だし、堂道は減給だし、かわいそうじゃん」 「ま、そうだな……」 「……おう、頼むワ」  室の意見に、羽切は納得した模様。  別に給料がちょっと減ったくらいどうってことねえけど、ここは同情を買って羽切に押し付けてやろう。  メールで辞表という今時な部下の始末と責任を負わされた。 「上は内情も知らずに監督不行き届きってか」  羽切が言いながら注いでくれる。  オッサンらしく、ビールはナマじゃなくて瓶。 「茂武田なんて、逆に辞めてくれてありがとう案件なのにさ、お前はいつも貧乏くじ……。元気出せよ!」 「うるせえよ」 「お前、根気よく育てようとしてたのにな」 「……そら、一応は部下になったんだもんよ」 「今の子は打たれ弱いから。無理やりでも褒めて褒めて、やっと育つって感じだな」
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