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茂武田。
それなりにかわいいところもあったんだけど。
減給より、部下が去っていたことの方がちょっとヘコむな。
情けねえから言わねえけど。
「ま、ま、飲め飲め。降格、異動じゃなくてよかったよ」
「飛ばされたら行ってやるよ。地方はどこも人間優しいし」
「お前、もっと本社に執着しろよ! かわいくないよ!?」
しょっぱいビールを飲んでいると、「おつかれー」と羽切が挨拶の手を挙げた。
見ると向こうで、たまゆらサンが「お先です」と頭を下げている。
「あらら、玉響さん帰っちゃうのー?」
「みたいだね」
「玉響さんだけ先に? オイオイ、もしかして~?」
「……なんだよ」
室が意味深に体を寄せてくる。
「オマエが来たからじゃないのー? 玉響さんにどんだけ嫌われてんのー? 顔も見たくない! 同じ空気吸うのも無理! 的な?」
マジ、イヤな性格してやがんな、こいつ……。
「かもねぇ。トラウマになったんじゃない? 堂道」
お前まで! 誰のせいだよ!
「なにしたんだよー!?」
「なんもしてねえよ!」
俺のせい!? え、そうなのか。いや、違うだろ。さすがに。
「家遠いんじゃねえの?」「近いはず」「門限とか?」「独り暮らし」
「えー? あー、ホラ! あれだ、デートだろ」
「彼氏!? イイヨネ、若いって!」
「そうそう、今から男とイチャイチャすんだよ、あの女は」と俺。
「イチャイチャ、うらやまスィー」切なげに室。
「イチャイチャって……きょうび言わないよ」羽切苦笑。
『きょうび』こそ、言わねえよ!
結婚まで988日
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