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結婚まで930日 #堂道と心眼
待ち合わせの店に着くと、すでにカウンターに草太の姿があった。
思わず、前後左右を確認する。
「あはは、今日は大丈夫だって。俺だけ、俺だけ」
「信用できねえ」
「この前はごめんって。それとも糸ちゃんいてほしかった?」
「コロス」
先日、呼び出されて行ったら騙された。
たまゆらサンと佐代田サンがいて、その時のことを思いだしてイラッとするが、さらにそのあとに起こった出来事に怒りがしぼむ。
「お前いつから知ってんだよ」
「結構、最初から?」
「最初って合コンで会ったときか?」
「うん。そん時から糸ちゃんはゲシさん狙いだったよ」
振り返って考える。
「だから俺にも来いとうるさかったのか?」
「そうだよ」
「女心わかってないなー」
「普通わかんねえよ」
社外ならそういうこともないことはないと考えたかもしれないが、なんせ相手は会社の部下なのだ。
「……惚れられる意味がわかんねぇ」
「みたいだねー。ゲシさん、会社で相当パワハラセクハラやばい上司なんでしょ?」
「セクハラはねえよ。佐代田さん、結構言うな……」
「そう小夜ちゃん毒舌なんだよー、それがまたツボってさぁ」
草太が笑う。
なんだ、その照れたような、なんだ、もう彼女はお前のモンかよ!
「糸ちゃんの心眼すげえ!って俺は感動してるけど」
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