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スマホに触れて、ため息が出る。
「しかし。まあ。なんか。すげえわ。若いわ。糸チャン」
ちょん切ったはずの『糸』は一本の電話によって、また結びなおされたらしい。
まさに『糸デンワ』なんちゃって。さむ。
毎朝、一緒の電車だし、ラインは復活した。
「……ま、今だけだろ。変な熱に浮かされちまってるだけ」
「え、糸ちゃん、ないの!? もったいなくない!?」
「何より会社の人間だもん。ナイ。無理。つか、一体あの子らいくつだよ? 親子ほども離れてるよ。なんか色々リスク多すぎ」
「えー」と草太は不満そうだ。なんでお前が残念がる?
「……俺は小夜ちゃん、結構本気だよ」
「本気で結構。しかし、まさかお前と佐代田さんとはなァ。世の中何が起きるかわからん」
スマホにメールが届く。
明日の夜の接待がキャンセルだ。
「結婚式でスピーチしてよ」
「もう結婚の話かよ。つきあってもないんだろうが」
「俺と小夜ちゃんが結婚して、堂道糸夫妻と仲良くするとか超楽しくない?」
「めでたいな、お前」
おもしろい未来かもしれねえけど。
そんな未来は訪れません。悪しからず。
糸を振るまであと1日
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