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結婚まで920日 #堂道と栄養ドリンク
「それ前にも言ったよな!? なんでできねぇんだよ!」
「お会計1836円です」
「あー、悪ぃ。すぐかけなおすから。すんません、これで」
財布から2000円。
「164円のお返しです」
釣りをレシートごとポケットに突っ込む。
社屋ビルの一階にあるコンビニは他店舗と同じ二十四時間営業で、残業の相棒としてはありがたい存在だ。
ぽつんと明るいだけでも救われるし、深夜の従業員に勝手に連帯感を感じて「お互いがんばろうな」とか思ったりする。
店先で栄養ドリンクの蓋を開け、一気に胃へ流し込む。
焼けるように熱い。
もう何本目だろうか。
だんだん値の張るものへレベルアップして行ってることに、あのバイト君は気づいてるな、きっと。
あの店では、下は三百円台から、五種類くらい揃えられている中の、とうとう一番高い小瓶。
「ったく」
家に帰る時間ももったいなくて、ネカフェでシャワーと思って降りて来たのに、部下は相変わらず使えない。
本当に猫の手も借りたい状況だ。
仕事量に頭数が全く追いついていない。
アプリを立ち上げて、メッセージを送る。
『今から戻る』
若いのに、終電気にせず、一生懸命仕事をするだけまだマシな人材なのか。
「暇などっかの営業、一人二人借りれねえかな……」
もう仕事はできなくていい。そこまで望まない。
手にしていたスマホの、アプリをまた立ち上げて、つい開いてしまう人物。
『まだ残業中ですよね。遅くまでお疲れ様です』
星一つ見えない空を仰いで、またスマホを胸ポケットにしまう。
「はー、もうちょいやるかァ」
共に徹夜になりそうな部下に差し入れを買うために、再び店内へ。
栄養ドリンクと、チーズケーキなんか買ってみた。
さあ、やるか。
あと少しは、頑張れそうです。
ありがとうございます。
一方的だけど。
#結婚まで920日
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