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結婚まで1001日 #堂道と不惑
「んじゃ、改めて、おつかれさんでーす! アンド、結婚おめでとー!」
「ギリギリ三十代か。滑り込みセーフ婚、オメデト」
前の会社の同期が結婚すると連絡を受けた。
加古、三十九歳。初婚。
「裏切られたわァ。互いに独身を誓い合った仲だろうが。マジで、いつどこでどうなったんだよ」
「結婚相談所に登録して」
「聞いてねえよ。お前、結婚願望ゼロだったじゃん」
「堂道は一応一度は結婚してるじゃん。僕も一回くらいは経験させてくれよ」
「あ、彼女元気だよ」ボソッと追加「それ、いらねえ情報」
「結婚なぁ、憧れがあるのはわかるが、実際そんなイイモンではないぞ。なあ、堂道?」と同じく同期でこちらは既婚者の牟樫。
「俺に聞くか? だからって独りも大していいもんではないぞ」
「あ、あいつまだ独身だぞ」「もっといらねえ情報」
「堂道もまだ一人か?」
「おう」
「彼女もいないの?」
「おう」
「いいねぇ、まだまだ楽しめて。恋愛できて、夢見れて」
「アホか。アラフォーの恋愛に夢なんかあるわけねえだろ。あったとしても女の策略と打算だらけだ」
「そうだよ! 相談所なんてどんなに世知辛いか。学歴年収肩書だけが僕のアイデンティティ。病みそうだったよ」
「それを言うなら、俺の家での序列なんか犬の下。ATMと呼ばれている……。結婚ってなんだろう、が最近の俺のテーマだぞ」
しんみり。
「……最近、仕事どうだ? 課長サン」
「どうもこうも若いのは使えねえヤツばっかだし、上はアホばっかだし」
「どこも同じか」
部下が、上司が、取引先が。
仕事の愚痴の方がまだマシってどういうことだ。
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