結婚まで905日 #堂道と給湯室

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結婚まで905日 #堂道と給湯室

 女性社員がまとめてコーヒーカップを洗うなんてのは過去の話。  カチョーだろうがブチョーだろうが専務……はさすがに秘書がいるだろうけど、ともかく自分で使ったカップは自分で洗う。  この流し台、低いんだよな。くそ、腰痛い。  給湯室で洗っていると、知った話し声が聞こえて来た。  男性社員も給湯室で噂話する、これが時代ですヨ。  俺の悪口話すんじゃないぞ。俺、いるからネ。  誰が聞いてるかわからないんだぞ、ここは。 「二課、いいなー」 「そうなんだよ。最近、糸ちゃんがコーヒー淹れてくれて」  そうなんですよネー。  糸チャンが入れてくれるんですよ。お茶くみは仕事じゃないのに。  かくいう俺も、そのカップを今、洗っているわけで。 「糸ちゃんって、仕事頼んだ時『はいっ』て明るく言ってくれてるのがかわいくてさ」  うんうん、あれ、いいよな。 「夏原さんは怖いからなァ」  うんうん、コワイ。 「糸ちゃん、フツーにかわいいしな」  うんうん、かわいいよな。いや、フツーよりは、十分かわいいだろ。 「でも玉響さん、確か彼氏いたよな?」  ノンノン。カレシとは別れたんだ。 「別れたって聞いたかも」  そうそう。別れたんだ。お前、情報早いな。 「マジ? なんで!?」  なんで? 知らん。なんで別れたんだ? ……まさか、俺か? 「ナイだろー」 ……ですよね! 「社内恋愛はヤバいだろー」 ……あ、そっちの話か。  うんうん、社内恋愛ないよね。
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