結婚まで905日 #堂道と給湯室

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「今、玉響さんとどうにかなってみろ。堂道課長にすごい目で見られんぞ」  アホウ。さすがに俺もめでたいことにめくじら立てねえよ。 「でも逆に、から糸ちゃん守ってあげたら『榮倉くん王子様』ってなるかも」  なるか? なるの? 「お疲れ様ですー。私、カップ洗いますよー」 「糸ちゃん。お疲れ様ー。悪いね。お願いします」  おいおい、お願いしてんじゃねえよ? 糸チャンはお茶くみOLじゃねえんだよ。 「あ、課長!」 「……おう、おつかれ」 「私が洗います!」 「別にいいよ」  マグカップ一つ洗うのに、五分はかかってますけど。  節水の張り紙が良心にイタイ。   「そのマグカップ……。かわいいですよね。'15年のクリスマス限定デザイン」 「あ、これ? そーなの? 詳しいのな」 「あ、え、す、スタバ大好きなんで……!」 「もらいもんだからよく知らねえけど」 「プレゼントですか?」 「ん、ああ……取引先の人から」 「……女の人ですか?」  同じ流し台で、横に並ぶ糸チャン。  ようやく水を止める俺。  「……私情?」 「いいえ! 持ち込んでません」  老兵は去るのみ。あ、その前に『やられ役』が残ってるか。  榮倉、頑張れ。 「四時半からミーティングな」 「はいっ」  うんうん、糸チャンが『はい』って言うの、確かに、いいよな。 #結婚まで905日
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