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彼女の人生と俺の人生が交差する瞬間が目の前にある。
何かの間違いかもしれないし、偶然か必然かわからないが間違いなく重なりはする。その時間は一瞬か、一ヶ月か、一年あるかないか。
しかし、限りがあることも、置かれた環境や条件や何もかもを差し引いても、恐れている場合ではないと思えた。
俺の答えひとつで叶うなら、ひとときであっても、彼女を幸せにしたいのだと俺の中の俺が叫んでいる。
「寝ててやる」
不覚にも目頭が熱くなって、慌てて座席を倒し、寝るふりをした。
目を閉じて、彼女の言葉を何度も頭の中で繰り返す。
愛されていることに身を任せると、不本意だが幸福感でいっぱいになった。
しかし、愛されていることに甘んじていたのはおそらくもっと前からだ。
恋愛というのは誰かが心の近い場所にいるということで、心のそばにいつも誰かがいるということは、その誰かとすべてを分かち合い、支え合っているということ。
嫌なことは半分に、幸せは二倍に。
ここのところ、ずっとそんな気分でいられた。
彼女を遠ざけておきながら、心のどこかで幸せを感じていた。毎朝、毎晩、毎日、いつもどんなときも。
犬でも飼おうかと思っていたそれを、彼女が去ってからでも十分だと思ったところで、命知らずな眠気に襲われて、俺は堕ちた。
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