結婚まで893日 #堂道と復路

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結婚まで893日 #堂道と復路

────だからといって、どうアプローチしたもんか。    全くわからん!  堂道夏至、四十歳。  恋愛の仕方を忘れてます。 * 「オーイ、椎野ォ」 「あっ、課長! すんませんッ! えっ、糸ちゃん!? なんで!?」  なんでもくそもねえよ。  お前のせいで、このトシで恋するハメになっちまったじゃねーか。 「ったく、どういうことだよ」 「ハイッ!」  イヤ、だってよ、男と女なんて、徐々に仲深めていってイイ感じになってなんとなくそうなるとか、酒の勢い借りてやっちまうとか、それ以外の方法、俺知らねえよ。  付き合って下さいとか言うのも言われるのも、ンなもん高校生までの話だろ。  いいトシして、好きです、俺も好きです、なんてこっぱずかしくてやってらんねーよ。 「課長、すすすみません……!」 「お前のミスなのか?」  ああ、ミスったのは俺だよ!  散々仕事に私情挟むなとか、まったくどの口が言うんだって話だよ。やっぱり俺も好きだわとか言うのかよ。だせぇな。ハズいし。  「あー、よくない上司の見本だよ。ああいう上司にはなりたくねえな」  いや、マジでさ、部下に手を出す上司にだけはなりたくなかったのに、よりによって、なんでこうなった。 「さ、戻れ。仕事しろ、仕事!」 「ハイッ! では、お疲れ様です!」  うんうん、椎野もずいぶんしっかりしてきたな。  さ、帰り道。俺の本番、こっからじゃん。  どうやって始めるか。  
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