結婚まで893日 #堂道と復路

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「私は新幹線で帰りますが」 「別に」  って、かわいくねえ返事しちまったよ、オイ。  けど、こっちもいっぱいいっぱいなんですわ。  百二十パーセント、想定外だからな。  けど、認めちまったからには一緒に帰ろうヨ。  アー。読者の皆様。  恋愛の始め方、教えて下さい。  年上っぽくて、素敵なオジサマっぽい、大人の。   ……いや、だから、読者って誰だよ! 「か、課長! 私、邪魔だったら一人で帰りますから……!」 「邪魔じゃねえよ」  とにかく、うまいもんでも食わせてやりてえな。  たぶん喜んでくれるだろうあんたの顔を、目を逸らさずに見てみたい。 「腹減ったー。せっかくだし、ひつまぶしでも食ってくか。なに? 腹減ってねーの?」  たったこれだけ、ただメシ誘うだけで、そんなにかわいい顔してくれんのか。  糸チャン、やべーな、オイ。  やべ、顔ユルんでるわ。  さすがに今日の今日では無理だけど、明日か明後日か、できるだけ直近で、すげぇ高いレストランとかで花とかプレゼントとか買って、世紀の告白してやるよ。  オッサンの強味なんて経験とカネしかねえからな。  って、いきなり社用車とか、シマらねえけど。    俺の人生、最後の恋だ。  すべての力を使い果たすつもりで、俺の全力で愛してやるよ。  愛してやりたい。  いや、愛させて。めいっぱい、一生分。  堂道夏至、最後の恋のはじまりだ。   #893日後に結婚することを俺はまだ考えもしていない
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