1000日後に結婚する夏至

結婚まで873日 ＃堂道と日常

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AM7：15　
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最寄り駅着。
最近忙しくて早朝出勤が続いている。改札に糸の姿はない。
ある時、毎朝駅で声をかけてくる部下が現れた。
偶然かと思っていた。疑いもせず、ただ同じ電車なのだとしばらく思っていた。
待ち伏せされていたとわかってからも、時間をずらそうとは考えなかった。そして、例えば最近のように違う時間帯に出勤する日は落ち着かなかった。
約束でも待ち合わせでもないのだから、「今日はいつもの電車に乗りません」とかいちいち断りを入れる必要もないだろうし、待ちぼうけを喰らったとてそれは相手の勝手だ。こちらが気に病む必要は全くない。
むしろ、ざまあみろだ。これに懲りてやめるきっかけになるだろうとも思ったりした。

二人で通勤する日課は今も続いている。
泊った翌朝は同じ電車に乗って行くし、普段、互いに時間が合う時は、俺も駅で待ったりもする。「早く行く」とか「今日は間に合いません」とか、今は連絡を取り合うから。
人の波には同じ会社のやつらもいるし、噂になりそうなものだが、誰もそうだとは思わないだろうところは相手が俺だから。
糸が変わり者と思われているくらいだろう。そんなの知らん。っていうかそのとおりだ。あいつはかなりの変わり者だ、だって俺だから。

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AM10：15
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鬼上司。
そう呼ばれてるのは知っている。嫌われてるのも、恐れられてるのも。
チンタラ仕事してて成長すっかよ。
自分の能力棚に上げて、なんでもかんでもハラスメント扱いしやがって。

「あー、もう行っていい！」

「し、失礼しますっ！」

ったく、なんでこうも一から十まで言わねぇとできねえんだよ！ボケ！
糸にはわりと諫められる。つか、偉そうなこと言ってきやがる。
が、けっこうキく。このトシになると注意される場面も減ってきて、暴君になりがちだ。
でもな、そんな惚れた女の一言二言で直るような性格じゃねえんだよ！
パワハラなんてクソくらえ！
あー、空気悪ぃ。
────ヴヴ。
新着メッセージ。
……糸チャン、仕事中にラインしちゃダメですよ。
なんだよ。子犬の画像……！　手法変えてきがった！
深呼吸。

「あー。椎野ォ、さっきのだけどォ……」

俺、チョロいなー。
マジで弱い……。糸じゃねえ、子犬に！