結婚まで途中下車? 堂道と雷原さん

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『そしたらね、ちょうどそちらの病院の院長だっていうじゃない。息子がXにおりますのよって言ったらね、お嬢さんも夏至ちゃんと同い年で独身なんですって』 「母さん、俺、そういうのいらねって」 『あらそう、ご縁かしらと思ったんだけど』 「ムリムリ。忙しいし。だいたい、俺医者じゃねえし。そこんとこ、ちゃんと伝えたのかよ」 『ああ、そういえば言ってないわ。そうねぇ、まあ、気がむいたらいつでも教えてちょうだい。じゃあね』  一方的に通話が切れる。 「……ったく、朝の忙しい時間に電話かけてきたと思ったら……」  母はたまに見合い話を持ってくるが強引ではないので助かる。  男やもめの俺を心配してはいるようだが、何が何でも再婚しろとは言わない。  が、たまにすごいのをぶち込んでくることがあって、二、三年前、二十歳のお嬢さんとの縁談があった。当時は、十七も八も年の差なんて天と地のように離れていると思ったものだが、そういえば糸とだって同じくらい離れている。恋愛しようと思えばできるらしい。 『おはようございます!今日も元気にパワハラで行きましょう!』 「なんでだよ」 『今度の連休、会いに行ってもいいですか?』 「こいつはいつまでこんなこと言ってんだ」 『おはよ。無理。来るな』  久し振りに返信した。  これだけはきちんと断っておかないと来かねない。 *  昼休みに羽切から電話がかかってきた。 『お久しぶりー! どうだ、そっちは』 「針のムシロ」 『そうかそうか寂しいか』 「まあ、仕事以外は暇だわ」  しばらく仕事の話をして、いきなり話が変わった。 『で、お前どこ住んでんの?』 「は?」 『遊びに行きたいから教えてよ。積もる話もあるし』 「なんで遊びに来るんだよ? 別にいいよ。そっちに帰ったときでいいだろ」 『だったら年賀状書くわ』 「……おかしいだろ」  そろそろ読めて来た。   「おい、余計なことしてくれんなよ」 『そうは言うけど、逆にお前よく手放せたよなぁ』  たしかに異動がなければ、俺の人生も変わっていたかもしれない。 「ま、そういう運命だったんじゃねぇの?」 『まあ、健気だわ。……頑張ってるよ、玉響さん』 「仕事頑張れっつっとけ」 『ホント好きなんだよ、お前のこと。そこは疑わなくていいと思うよ』 『んなことしてる暇あったら婚活しろって言っといて」  通話を終える。  もう、東京に戻らなくてもいいかもな、と少し思う。
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