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小さい頃から姉ちゃんの奴隷だった。冬至は世渡り上手だから、そのしわ寄せも俺にきて、とにかく姉にはいいように使われた。
しかし、おかげで女心は理解している方だと思う(のわりには結婚には失敗してるがそれはおいておいて)。
玉響糸サン、二十六歳。
中肉、一六二センチのEカップ。体重は教えてくれない。若くて、かわいい(というか若い子はだいたいかわいく見えている)。
性格は明るくて、前向きで、打たれ強くて、粘りがあって、あきらめない。
わがままでも、ヒステリーでも、束縛女でもなく、パパ活目的でもなく、特に難ナシ。
どんなにぶった切っても次の瞬間には復活していて、いつも元気で、犬っころのようにダメだって言っても後ろをついて来て、ちょっと撫でたら思いっきりじゃれついて来る。そんな子だったが、思い返せば、糸はずっと頑張ってくれていたのだ。
考えればすぐわかることだった。
あろうことか、恐れられ、嫌われてる俺に声をかけて来て、最初は相当冷たくも当たった。
鬼だか悪魔だか俺の呼び名は知らんけど、社内で『堂道』に拒否られんのは相当キツかっただろう。
あまつさえ、異動になって、別れて、離れ離れになって。
すべては糸のことを思ってと口では言いながら、俺は自分のことしか考えてなかった。
いくら糸がゲテもの好きのドMだったとて、限界ってもんがあるはずだった。
『若いってすげえな』くらいの単純さで解決していた俺はアホだな。
当然だけど、糸は不死身などではなく、普通のハートの普通の女性。
俺のことで泣く糸は、ただただかわいく、愛しかった。
男は好きな女に泣かれると弱いけど、ちょっと嬉しい。
雷春さんとは本当に何もない。
そうは言っても、男女の仲なんて要はタイミング。
『課長が私のものでよかった』、糸はそう思っとけ。
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