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結婚まで250日 #帰って来た堂道
「次長着任おめでとうございます」
一応花束なんか渡されて、歓迎されたがどうせ形式的なもの。
絶対めでたくねえだろ、お前ら。
「X支社に二年ちょっといましたが人間そうそう変われるもんでもなく。俺の事知らない方は噂通りの人間なんで。ま、ヨロシク」
空気読む俺。笑うに笑えない微妙な空気。
「以上、解散。仕事うつれー」
ヒソヒソ、チラチラ。
変わってねえなー。この雰囲気久々。
うっせー、ウゼー、ほっとけよ。
こんな俺だけどな! もうすぐたぶん結婚するんだぞ、すげぇだろ、って誰に対する何自慢だよ。
器小さいな、俺。
採光に優れまくった都会的ビル。昼間から煌々と明るい照明。広々としたスペース。連なるデスク島。オフィス然としたグレーとブルーのフロアカーペット。
うるさいまでのキータッチの音。ピリピリしてて、電話が鳴って、あちこちから声が飛んで、基本イライラ、ヌルさゼロ。
しかし、この雰囲気にあてられてすっかりヤル気出ちまってんだから、俺も立派な社畜だ、しかも優良。
本社営業部には新しい顔ぶれもけっこうあった。
各課長も室以外は変わっている。
夏原よ、お前トシとったな。って思っただけなのに、すっげぇ睨んできやがって、あいつ、人の心読めんじゃね!?
榮倉、当馬。そんな嬉しそうにしてくれたら、ま、俺も嬉しくないわけないわな。
糸は。
え、糸って、こんなかわいかったっけ?
お前、いつの間に営業部のアイドルになったよ?
え、マジ? すげぇかわいくね? おまけになんで今日そんなピタっとした服着てんだよ? 胸のデカさ強調してんのか!?
こんな男ばっかの部の中で、この二年よく無事だったな。っていうか、知らぬが仏? よく心配せずにいられたな、俺。
おいおいおい、新顔クン? ちょっと近くね? お前か、最近糸が下についてるって言ってた関西から来た奴は!
お前の喋りがたいそうおもしろいそうだが? 試しに俺を笑わせてみろよ。
え、いやいや。
ちょっと浦島気分。
一課で飲みに行くって、割と俺スルーしてたけど、焦らなきゃいけねぇとこだったのか。ヤバい。
女の好きな『オフィスラブ』ってこんなんじゃなかったっけ?
その人、俺のですから。
知ってる? 俺、鬼の堂道。
そのフィアンセに、ちょいと馴れ馴れしすぎません?
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