不可幸力

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一緒に研修に来た社員の男の子は、こちらに彼女が住んでいて彼女の家に住み着いている。 だから自然と櫻井くんと二人きりの通勤になる。 気を使わなくていい存在は私にとって片手ぐらいしかいない。 その一人である櫻井くんは貴重な存在。 櫻井くんはいつも精神的に安定している。 だから意外と気を遣ってしまう性格の私にとって楽だと感じるんだと思う。 朝の通勤電車、何も言わなくてもいつも背後に立ってくれたり、吊り革の捕まる所がない時は支えてくれる。 飲む事を忘れがちな私は気づくと飲まず食わずで仕事に集中してしまう悪いクセがあり、気付くと喉がカラカラの時がよくある。 そんな時、そっとペットボトルをデスクに置いてくれたりする。 スーパーへ行けばスッと荷物を持ってくれたり、私が残業になると何気なく待ってくれていたり。 日野さんには櫻井くんは私の事が好きだと思うと言われたけれど「櫻井くんは前まで私の親友と付き合っていた。」と伝えたらびっくりしていた。 勘違いかぁと何か考えているようだ。 「櫻井くんおっきいからよく見えるんじゃない?」と私が言うと不敵な笑みを浮かべながら、「七瀬ちゃんもしっかり悪い女だな。」と言う。 どこが?と言うと「あざといっ。」と言いながらほっぺをムニっとつままれた。
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