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「まだ着かないの?」
「……わからない」
なんの収穫もないまま闇を彷徨い続けていたふたりには、すでに今どこを歩いているのかわからなくなっていた。
「すこし休憩しよう」
腰掛けるのにちょうどいい残骸を見つけ、彼女に座るようにうながす。
彼女がいれば夢が止まってしまった原因へと辿り着けるかと思っていたが、また予測がはずれたようだった。
いや、ここは彼女の夢の中だ。この少女がカギを握っているはずだと演算機が意見する。そしてそのためには、彼女のことをもっと知らなければならないと演算機が捲し立てる。
エイトはそれが演算機の真意なのか、それともただの好奇心なのか図りかねたが、特にそれといって反論もないのでそれに従うことにした。
退屈しのぎに足をぶらぶらしている彼女に声をかけようと発声しかけ、ふと気づく。
そういえば、彼女から自分だけの名前をもらい、そのことに浮かれていて忘れていたが、僕はまだ彼女の名前を知らない。
「わたし、名前ないの。……パパとママがいないから」
名前のことを訊ねるとすんなりと答えてくれたが、同時に彼女の表情に影が差しこむ。
「わたし、パパとママの顔覚えてないんだ。思い出そうとしても、いっつも顔がぼやけててやっぱり思い出せないの」
〘■■■■■■■■■■■■■■■■■■〙
「……なら、僕が名前をあげるよ」
本当?と少女は顔を輝かせる。
どうにかして彼女の笑顔が見たくて、咄嗟に発声してしまったが、そもそも名前なんてどうやってつければいいのだろうか。
〘■■■■■■■■■■■■■■■■■■〙
―――サナ……
何の拍子か演算機がそんな回答を寄越してきた。
えっ、と彼女がこちらに顔を向ける。どうやら口に出してしまっていたらしい。
「わたしの名前は、サナ……」
少しうつむいてその名を反芻するように繰り返していたかと思うと、すっと顔をあげて、
「とってもいい名前。ありがとう、エイト」
そう言って柔らかな笑みを返される。
「大切に、するね……」
僕は彼女に■■■■■■■■■―――――
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