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「どうも。今流行のウーバーイーツ系女子です!」
インターフォンのモニター越しに、幼馴染の朱莉の声が聞こえた。黒いキャップに白抜きで「U」の文字。ツインテールに眩しい白シャツ。肩の紐は、特徴的な四角いリュックにつながっている。
俺はモニターに向かって一言吐いた。
「帰れ!」
「嫌だよおおおお」
むせびなく声はすこぶる近所迷惑だ。いや、そうでもないのか。ド田舎にある書道教室の周囲は田んぼと山と抜けるような青空しかない。
朱莉が額の汗をぬぐっている。風こそ涼しいが、秋の気配漂う空から降ってくる十月の日差しはまだ暑い。
「アキ、おねがい、玄関あけてよ、倒れちゃうよ、喉乾いた」
「ずうずうしいやつめ」
「いいの!? 私、倒れるよ!? 倒れちゃうよ!??」
「なあ、自己責任って言葉知ってるか?」
「あ、もう、つらいなー、つらい、いろいろ辛くて恥ずか死ぬんですけど!」
じゃあなぜ来た、と喉まで出かかった言葉を呑み込んで、俺は、すごく元気な配達員を家に招き入れた。
朱莉のマイペース具合には幼稚園のころから慣れている。高校生になった今も変わらない。腐れ縁もいいところだ。
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