告白前夜と枯れない花

1/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

告白前夜と枯れない花

 世の中には、いわゆる“許されざる恋”だとか“障害のある恋”といわれるものがやたらと多い。例えば同性愛だとか、家族間での恋だとか、教師と生徒の恋だとか。実際自分が当事者になったなら頭を抱えるしかないというのに、フィクションの世界ではやたらと取り扱われるように思う。ロミオとジュリエット的な“悲恋”に、どこかでロマンを感じてしまう人間が多いということなのだろうが。 「でも実際は、ふつーにハードル低い恋した方が気楽だよなあ」  はあ、と私の目の前でため息をつく彼は、凛久(りく)。ちょっと吊り上った目、大学生にしては童顔。多分イケメンの範疇に入るであろうその顔は、私・凛緒(りお)とそっくりである。それもそのはず、私達は双子の姉弟だ。今でこそ男女の差もあって間違われるようなことはなくなったが、小さな子は二卵性と思えないほどそっくりな姉弟だった。子供の頃は声さえ似ていたので(今も男女であるにしてはトーンが似ているとよく言われる)、面白半分で服を交換すれば両親でさえ見分けがつかなかったほどである。  そんな彼も、今では大学生。東京の会社の就職が決まっているので、一年後にはもう此処にはいない身である。ぐーたら性格と地元愛もあって、地元に就職して家族と同居し続けることを選んだ私とは大きく違う。幼い頃から二人で唯一似てない点がこの性格というものなのだった。彼は私と違って真面目だし、成績も良かったのである。運動神経と喧嘩、気の強さで私に勝てた試しはなかったけれど。 「ほら、こう言っちゃなんだけど、俺顔も悪くないと思うし。勉強もできるしいい大学入ったし、大企業にも就職決まってんだぜ?だったらさあ、もっといい物件なんかいくらでもあったと思わね?」 「自分でそこまで言えちゃうあんたは凄いと思うけどね。まあ、間違ってないけど」 「だろ?……なのにさあ、なんで人生初めて本気で好きになった相手が男なんだよおかしくねー?」  自宅で異性の姉弟で、リビングでぐだぐだしながら話している話題がそれである。両親がどっちも仕事でいないタイミングだからこそ話せたことと言えるだろう。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!