14. お前を壊してしまうほど

2/5
前へ
/61ページ
次へ
ぽとんと、鈍くなっていた感情に小さな波紋が生じ、みるみる波立っていく。ついには大波になり、俺の心を大きくかき回し始める。 「たとえば……もし俺が、お前に興味が無くなったとしたって、今は……。今はもう何も問題ないだろ?」 感情の波に揺られて、俺の声も揺れてしまう。 たった数語の言葉を吐き出すのも難しい。 「でも! 興味が無くなったら、バレー部の時みたいに、健太郎、全部忘れちゃうんだろう? つまんないと思ったら、僕なんかもうどうでも良くなっちゃうだろう?」 優斗の右手が俺のシャツを強く掴んでいた。 「なあ!」と振られるその手をとって、『大丈夫。俺たちは変わらないよ』そう言えたら、どんなにいいだろう? だが、これ以上は無理だ。 優斗、お前は間違っているよ。 そんなに俺を追い詰めてはいけなかった。 逆なんだよ。逆だ。 俺は――。 俺は、お前に執着しすぎているんだ。自分を壊してしまうほど。 掴まれていた優斗の腕を握り、ゆっくり引き離す。 「だったら、大人しくやらせろよ」 あっ、と見開かれる優斗の目を残像に、俺は彼にむしゃぶりついた。 床に引き倒すと、抵抗をゆるさず、ダボダボのTシャツをまくり上げ鎖骨に舌を這わせる。そのまま強めにかむと、優斗がびくっと揺れた。 かまわず首筋に移動し、夢中で口づける。甘噛みしてむしゃぶりつく。 すると、後頭部を優斗の手でつかまれた。 また(こば)まれるのか? 苛立ちが湧き、反射的に両手を抑え込めば、優斗の(まなじり)からぽろりと涙が零れ落ちた。 ぽろぽろと転がり、金色の髪の毛に吸い込まれるように消えるそれを見て、俺は動きを止める。 どんな顔をしているのか、知りたかったが見ることは出来なかった。 せわしなく上下する、彼の真っ白な腹を見て自問する。 これでいいのか? これからすることは、きっと、また優斗を傷つける。優斗を踏みにじろうとしている。 これが、本当にしたかったことか? だが俺は、目を閉じてすべてを追い遣った。 嗅いでしまった優斗の甘い香りに、とうてい終わらせる事など出来なくなっていたからだ。 再び唇で愛撫をはじめる俺に、彼があきらめたように力を抜いたのが分かった。 あとはもう、ただ、この体に溺れていくだけだ。 首からまた鎖骨、そして乳首へと舌を伸ばして唾液の道をつけながら、優斗のズボンと下着を引き下ろす。へそのくぼみを舌でくじる様に嬲り、下生えを濡らして()めば、優斗のそこはしっかり立ち上がっていた。 俺は体をずり落とし、開かせた優斗の足の間におさまると、右手でそれを支えて、鼻先を上から下までこすりつける。 最初は純粋に興味からだった。その造形が奇妙で、おもしろくて、それをそのまま忠実に写し取りたいと始めたことだった。 それが、こんなに愛しく思うようになるなんて、つくづく不思議だ。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加