14. お前を壊してしまうほど

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すぐにもっと強い刺激が欲しくなった。 動かそうとするが(すべ)りが足りない。離れるのが嫌だったが、俺は優斗の中から一旦引き抜いた。 「はぁっ! …………んくっ」 ずるりと音がしそうなほど重くなったそれが抜け出る時、優斗は激しく腿をふるわせ、そのままくたりと伏してしまった。 それを横目で見ながらベッドを降り、裸でクローゼットをあさる。かごに立てておいたボディーオイルを手に取ると、また彼の傍に戻った。 オイルを手に取り、こぼれるのもかまわず自身にたっぷり(まと)いつかせる。そして、横たわったまま浅く呼吸をしている優斗にまた圧し掛かかった。 早く一つになりたくて、焦って強引に腰を上げさせ、今度はバックから一息に貫く。 「……ぁあっ!」 優斗の背中が猫の様に反り返った。金色の毛並の猫だ。 白くて美しいその真ん中の背骨に手を這わせ、腰まで滑らせてやると、優斗の肌が粟立つ。 そのまま前に手を回し、やわやわと可愛がる。 オイルの滑りを借りてちゅくちゅくと音を立ててしごくと、優斗も快感の吐息をこぼし始めた。 俺はブランコをゆっくりと()ぎはじめるように、体を揺らす。 優斗ごと揺れて、少しずつ刺激が生まれるのを味わう。 少し余裕が生まれたのか、優斗が何か言いたげに肩越しに俺を見た。 その目は、涙の膜でおおわれて、黒々と光って、底の無い神秘的な湖のようだ。 体はこんなにも熱いのに不思議と凪いだその目に引き寄せられ、今度こそやっとキスをする。 優斗の熱い息を飲み込みながら、いつもそう感じる冷たい舌をからめ捕り吸い付き、おもうさま味わう。食いついて奥まで入り込み、上あごを撫でまわす。 そうしている間にも、俺は腰の動きを早め、大きくしていった。 ぱちゅぱちゅと早いリズムで結合部から音が鳴りだす頃には、優斗はたまらないと言うように顔をそむけ、吐息に、おさえられない嬌声が混ざるようになった。 「……はっ、はっ、ん、あっ、あっ、あっ」 心地よく俺を煽るそれを聞きながら、気がつくと俺は汗でぬめる体を優斗にぴたりと密着させ、きつく抱きしめていた。 決して逃がさないように両手を腹の上に巻きつかせ、自由を奪った姿勢で圧し掛かり、腰を振りたくる。 少しの隙間も作りたくなかった。 ぴたりとくっつけば、優斗の感覚も感じられる気がした。 このまま摩擦で熱され、溶けて混ざり合うのではないかと夢想した時、脳裏に浮かんだのは、どこかで見たアメーバの捕食だった。 体全体を大きく広げ、えさを包み、取り込む。 今の俺は、アメーバのように原始的な衝動で、優斗を取り込んでしまいたかった。快感の力を借りて、気持ちいいと感じるだけの生き物になれたら、このまま俺たちは混じり合えるだろうか? 汗で光る優斗の背中に額を押しつけ、祈るように口づけを落とす。 すると、びくびくと痙攣した優斗の口から、ひときわ大きな悲鳴が上がった。 その途端彼は力尽き、体重を支えていた腕を折った。 「…………も……きつぃ……」 肩で荒く息をする優斗は、ずっと慣れない姿勢に我慢していたのだろう。ぺちゃりとカエルの様にうずくまり、腕も足も震わせている。 可哀想に――俺は眉根をよせた。 可哀想に。こんな俺につかまるなんて。
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