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エレン先生の顔の横。掲げられた拳。
「バスで行くと仮定しよう。まず、どのバスに乗ればいいのか分からないよね。だって文字が読めないんだから」
一本の指を立てる。
「まわりの人に聞いて病院行きのバスに乗れたとするよ。どこで降りたらいいのかが分からない。停車するたびに運転手さんが教えてくれればいいけどね」
もう一本、指を立てる。
「病院に着いても受付の場所が分からない。問診票が書けない。処方箋を手に薬局に行ってもレジに表記される金額は読めない。なんとかもらった薬を一日に何回飲むのか忘れちゃってももう確認ができない。薬局の袋に書いてある電話番号の数字だって分からないんだから」
両手を使って、六本の指が立てられた。
そしてその指を立てたまま、児童ひとりひとりの顔を見る。
ノートに名前を書いた児童とは、一番最後に目を合わせた。
「たった小学一年生の君が君の名前を三種類にも分けて書けるのは、すごいことなんだ」
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