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「さっきのハンバーガー屋さんごっこのお店はね、実際に存在したんだよ」
ハンバーガー屋の話に戻った。
皆がええっとざわつき出す。
「正確には一日限定のサプライズ営業みたいなものだったけど、メニュー表の文字をあえて読めないオリジナルのものにしたんだ。何も知らずに訪れた客たちはビックリしただろうね。だって注文するのに肝心な、ハンバーガーの名前が分からないんだから」
それでどうなったの、買えたの、どうしたの。
そんな質問が一瞬で飛び交う。ことごとく失敗したさっきのクリア方法を皆、知りたがっている。
「反応はさまざまだったらしいよ。オーダーができずに怒る人もいれば、素直になんて書いてあるのかと店員に聞く人もいた。試しに読んでみて、言葉にならないハンバーガー名を口にした人もいたって。僕は怒る人以外を尊敬する。試行錯誤する人間って本当素敵だよ」
だけどこんな人もいたんだ、とエレン先生の顔が少しだけ暗くなる。
「諦めて帰っちゃう人」
声のトーンまで下がった気がした。
「読めないことを人に言えなくて、聞けなくて。食べたいのに食べられなかった。こんなに残念なことはないよ。せっかくそのお店に行ったのに。お金だって握りしめて」
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