今からハンバーガー屋の話をします

13/15
前へ
/15ページ
次へ
「さっきのハンバーガー屋さんごっこのお店はね、実際に存在したんだよ」  ハンバーガー屋の話に戻った。  皆がええっとざわつき出す。 「正確には一日限定のサプライズ営業みたいなものだったけど、メニュー表の文字をあえて読めないオリジナルのものにしたんだ。何も知らずに訪れた客たちはビックリしただろうね。だって注文するのに肝心な、ハンバーガーの名前が分からないんだから」  それでどうなったの、買えたの、どうしたの。  そんな質問が一瞬で飛び交う。ことごとく失敗したさっきのクリア方法を皆、知りたがっている。 「反応はさまざまだったらしいよ。オーダーができずに怒る人もいれば、素直になんて書いてあるのかと店員に聞く人もいた。試しに読んでみて、言葉にならないハンバーガー名を口にした人もいたって。僕は怒る人以外を尊敬する。試行錯誤する人間って本当素敵だよ」  だけどこんな人もいたんだ、とエレン先生の顔が少しだけ暗くなる。 「諦めて帰っちゃう人」  声のトーンまで下がった気がした。 「読めないことを人に言えなくて、聞けなくて。食べたいのに食べられなかった。こんなに残念なことはないよ。せっかくそのお店に行ったのに。お金だって握りしめて」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加