今からハンバーガー屋の話をします

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「ハンバーガ屋の話をする前に、見せたいものがある」  エレン先生はそう言って、一冊のノートを取り出した。  胸の前で、開いて見せる。 「これ、僕が日本に来た頃の日本語練習ノート。昨日家の棚から出てきたんだ」  へたっぴだよね、とエレン先生が笑うから、児童たちも遠慮なく笑った。 「なにそれ!ミミズみたいな字!」 「先生って昔、バカだったんだ!」 「あはははは!なんだか『ぬ』がカタツムリみたい!」 「俺の方がうまいじゃん」  いくら罵られてもエレン先生は怒らない。むしろ驚いたように目を広げる。 「こんなに下手な字なのに、これ読めるの?」 「読めるよー」 「ミミズみたいな字なのに?」 「だけどなんて書いてあるかはわかる」  小さな頃からひらがなに触れてるだけあるね、とエレン先生は二回頷いてペンを持つ。 「じゃあ君の名前を書いてみて」
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