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メニューの中身は変わっていないんだけどね、とエレン先生は付け加えて、同じサイズの用紙を配り出す。
手前の児童から順々に、えっという声が抜けていく。
「何この字」
ひとりの女子児童が聞いた。
「僕が作った文字だよ。名付けてエレン文字。かっこいいでしょ」
「これじゃあ読めないよ」
「うん。だから工夫して、注文してみて」
得意げなエレン先生に、少しだけ、たじろぐ彼女。
「さっきのゲームでもう終わりに……」
「つれないなあ。もう少しだけ、僕に付き合ってよ」
場が一気に静かになる。ひとりひとりが考え出す。
読めないメニューを、どうオーダーするか。
「いらっしゃいませ耕太さん」
今度の店員は旅館の女将風で、客の名前を知っているようだ。
「どれになさいます?」
「えーっと……ハンバーガーを……」
「当店には六種類のハンバーガーがございます。どれにいたしましょう」
「えーっと……この、右から二番目の……」
「申し訳ございませんお客様。私の手元にはそのメニュー表がありませんので、ハンバーガーの名前で注文してくださいまし」
「な、名前って言われても」
ドヤ顔のエレン先生に、彼は固まるだけだった。
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