美しい双子

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美しい双子

 僕は――僕達は双子として生を受けた。先に生まれた兄は「凛々(りり)」、数分後に生まれた僕は「路紗(ろさ)」と名付けられた。フラワーコーディネーターをしている母が、好きな百合と薔薇の花にちなんで付けたそうだ。 今になって思うと、僕には薔薇よりも百合の方がまだ合っていたと思うし、凛々は薔薇のように華やかさを持った、人を惹き付ける言いようのない魅力を生まれ持っていた。  僕等は一卵性双生児で他人が驚くほど瓜二つだった。成長して性格がはっきりする前は、親ですら間違えるほどで、名前にちなんで僕に赤、凛々に白の服を着させて判別していたそうだ。  保育園に通い始めてからは間違われることが煩わしくなってきたので、凛々と服に隠れていないところで違うところはないかと探し合ったことがある。そうしてようやく見つけた分かりやすい違いが、凛々の首の右側にある黒子と僕の左耳の裏にある黒子だったので、僕等は自分たちの特徴で判別してもらうのは諦めて、服の色の判別方法を継続することにした。  凛々は「明朗快活」という言葉が相応しい子どもだった。健康で運動が得意で、喜怒哀楽がはっきりしていて、自分の意見もちゃんと持っていて、主張する勇気も持ち合わせていた。  それに対して僕は身体が弱く運動が苦手で、引っ込み思案な性格で、いつももじもじして自分の気持ちを伝えるのが苦手だった。そうやって困っていると凛々が僕の気持ちを代弁してくれるから、僕は自分というものを表現する機会もあまり無くなった。  母は僕の性格は健康面の問題が大きいのだと考えていた。身体が弱いために大胆になれず慎重に動くことを選ぶしかなかったからだ、と。  僕は環境というより元からの気質だと思っているのだが、見た目も瓜二つの双子の凛々とこれほど性格が異なるのは、科学的に解釈すれば環境の影響が多いと言わざるを得ない。
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