再会

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 別れて即短い遣り取りで次の予定を取り決めてしまえるのだから、大和はモテるだろうな。少なくとも当時から女性には困っていなかったようだけれど。  家に辿り着き、ドアを開けると中は真っ暗だった。母はもう寝ている時間だし、兄は彼氏の家にしばらく泊まり込むから家を空けると言っていた。  僕は履いていたスニーカーを靴箱に仕舞い、両親を起こさないように音を立てないように慎重に自室に戻った。恐らく母は僕がいつも通り部屋にいるものと思っているだろう。  着慣れた上下スウェットの格好に服を着替えて、ベッドに横になる。  ――どうしてこんなことになった?   連絡先を交換して次に会う予定を取り付けたとは言え、それは「食事をする約束」だ。今日みたいにとんとん拍子でホテルまで行くなんてことは、もうないかもしれない。そう考えると溜息が出た。  本当は今日、僕は大和に抱かれるはずだった。二年間ずっと想い続けていた。好きだった。家族以外で身体を触られて大丈夫な、唯一の存在だから。全身で彼を感じてみたかった。  ――可愛いよ。  思い出して、心臓がきゅっと縮み、また吐き気が込み上げてくる。  僕はあの日、「兄の亡霊」になった。正しく「亡くした」のだろう。僕「路紗(ろさ)」は死んで、兄「凛々(りり)」の亡霊のように生きてきたのだから。
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