再会

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 目の前の男の言葉にはっとして顔を上げる。その舐めるような視線に背筋が凍った。七年前のことがフラッシュバックしそうになった時、肩をぽんと叩かれた。彼──大和、だった。 「何の話?」 「あーいや、なんでも! 楽しんで!」  男は焦ったように席を立ち、別のテーブルに行ってしまった。四人掛けのテーブルに二人だけ離れて座っている状態になる。 「邪魔した?」  恐らくコークハイだと思われる飲み物を大和が口につけて僕を見た。僕は「いや」とだけ言葉を返して空になったグラスを見る。 「つかお前まだ未成年じゃね? 二月生まれだろ?」  大和は店員を呼ぶと「ウーロン茶一つ」と注文した。グレープフルーツサワーを飲んでいたのは、未成年を理由に断ろうとしたけど、強引に注文されてしまったせいだったのだが、印象が悪くなってしまったかもしれないと不安になる。  しかし、そもそもの印象が良くないから今更だった。 「あんま飲み過ぎんなよ。その様子じゃ酒弱いみたいだし」  身体を気遣ってくれて嬉しくなるが、同時に切なさが込み上げてくる。僕は店員からウーロン茶を受け取って、目の前の小皿に取り分けていたシーザーサラダを口に運んだ。 「なあ、この後ホテル行こって言ったらどうする?」  唐突に彼の口から飛び出した言葉に一瞬固まり、大和の方を向く。彼は「どう?」と微笑んだ。  邪な感情を向けられた瞬間、僕は嫌悪感に襲われる──はずだった。しかし僕の身体に表れた反応は、心臓が跳ねるだけだった。
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