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ホテルから最寄り駅まで歩きながら、このまま二度と会うことは無いのだろうと思う。そう思ったら胸が苦しくなった。
「そういえばさ、彼氏と別れたんだっけ?」
「あ、うん……」
咄嗟に吐いた嘘だったので、すっかり忘れていたがそういう設定だったことを思い出す。
「じゃあ今フリーだよな?」
大和がバッグからスマホを取り出して、メッセージアプリのQRコードを画面に表示した。
「今度飯食いに行かね? 今日あんま話せなかったじゃん? お前の近況とかさ、結構興味あるんだよ、フツーに」
予想もしていなかった彼の言葉に驚き過ぎて固まる。が、すぐにバッグからスマホを取り出し、アプリを立ち上げた。家族以外と連絡先を交換したのは初めてだったのでもたついてしまったが、何とかQRコードを読み取って登録ができた。
「いつ空いてる?」
「いつでも大丈夫だから、合わせるよ」
「はは! なんそれ、チョロすぎ!」
大和は何がそんなに面白かったのか腹を抱えてひとしきり笑った後、「いいや、適当に誘う」と返した。
別々の路線だったため、駅に着いてすぐに別れた。別れた後、本当に登録されたのかどうかが不安になって、アプリを立ち上げる。「友達」欄に父母兄の名前の他に「大和」の名前を見つけてほっとした。
と、大和から「来週の土曜」「どう?」と二つに分かれてメッセージが届いた。僕はどきどきしながら「大丈夫」と返す。「じゃ、今日と同じ駅に十二時」という分かりやすい内容に「わかった」と返信して、やり取りは終わった。
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