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「おはよ」  席につくと、入谷くんが隣で言った。 「お、おはよう……」  情けないくらい小さな声。まともに目も合わせられない。  こんな調子なのに、告白なんてやっぱり無理。  ずっと、同じことばかりぐるぐる考えている。堂々巡り。  たった一言伝えるだけなのに、どうしてこんなに勇気がいるんだろう。  だけど、今日こそ、一歩進むんだって決めたんだ。 「入谷くんっ!」  私は声を振り絞って言った。 「話したいことがあるんだけど、いいかな」  心臓がいまにもはち切れそうだった。  おそるおそる顔をあげると、入谷くんと目があった。  入谷くんは少し笑って 「うん。俺も」  照れたように、そう言った。
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