3人が本棚に入れています
本棚に追加
「プライドなんて一ヶ月前に傷ついて、崩壊しているっすよ」
「そうか」
ぼくは一言で済ませた。
平凡な中学生には気の利いた台詞は出てこなかった。
「余計な気遣いだったな。新聞報道より効果的な秘策も、じゃあいらないかな」
「いや、それは教えて欲しいっす」
正直な奴だった。たしかにプライドは崩壊しているな。
ぼくは秘策を教授した。小日向はこんな方法があったんすね、と嬉々とした表情で膝を打った。この調子なら秘策が採用されそうである。
小日向は聞き終えると、軽くなった足取りで待機していたふたりのもとに向かっていった。ぼくもそちらへ向かう。
そのときぼくは日駆を見た。
日駆麗花。
ぼくの憧れの探偵。
ぼくはきみがどんな人間になろうと味方でいる。
学級委員長の筆箱を、いたずらという幼稚な理由で盗んだ犯人――ぼくを諭したときから、そう決めたんだ。
日駆はいずれ自分の才能と向き合う場面が出てくるだろう。そのときのためにぼくは力をつけている。
いつでも彼女を支えられるように、ぼくが彼女の代理品になろうと助手をしている。
ぼくはきみが輝き続けるためなら裏でどんなことでもしてやる。日駆がやれと言えば浮気をしてやろう――それがぼくの覚悟だ。
探偵を諦めようと、才能が枯渇しようと。
一生側に添い続けよう。
恋とも愛とも違うこの思いに、裏も表もない。
最初のコメントを投稿しよう!