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「プライドなんて一ヶ月前に傷ついて、崩壊しているっすよ」 「そうか」  ぼくは一言で済ませた。  平凡な中学生には気の利いた台詞は出てこなかった。 「余計な気遣いだったな。新聞報道より効果的な秘策も、じゃあいらないかな」 「いや、それは教えて欲しいっす」  正直な奴だった。たしかにプライドは崩壊しているな。  ぼくは秘策を教授した。小日向はこんな方法があったんすね、と嬉々とした表情で膝を打った。この調子なら秘策が採用されそうである。  小日向は聞き終えると、軽くなった足取りで待機していたふたりのもとに向かっていった。ぼくもそちらへ向かう。  そのときぼくは日駆を見た。  日駆麗花。  ぼくの憧れの探偵。  ぼくはきみがどんな人間になろうと味方でいる。  学級委員長の筆箱を、いたずらという幼稚な理由で盗んだ犯人――ぼくを諭したときから、そう決めたんだ。  日駆はいずれ自分の才能と向き合う場面が出てくるだろう。そのときのためにぼくは力をつけている。  いつでも彼女を支えられるように、ぼくが彼女の代理品になろうと助手をしている。  ぼくはきみが輝き続けるためなら裏でどんなことでもしてやる。日駆がやれと言えば浮気をしてやろう――それがぼくの覚悟だ。  探偵を諦めようと、才能が枯渇しようと。  一生側に添い続けよう。  恋とも愛とも違うこの思いに、裏も表もない。
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