10人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
納骨の日も雨だった。
涙のような雨が注ぐ中、骨だけになったまゆみを抱き、根津は納骨堂へ向かっている。
一足先に、墓地にはメアリがついていた。
傘もささずに佇むメアリ。
涙を洗い流すように、雨は強くなっていく。
根津の姿を捉えたメアリはゆっくりとした足取りで近づいてきた。
「彼女――まゆみさんは返ってこないけれど、事件の犯人に復讐がしたいですか?」
ザアザアと雨音が強くなるにも関わらず、メアリの言葉は根津の耳にはっきりと届いた。
「犯人、捕まらないですよ。このままじゃ」
冷たく響く声は、雨粒さえも凍らせそうな温度で。
根津には、今のメアリが葬儀の時とは別人に感じられた。
「どうして……」
それは犯人が捕まらないと言うことに対しての疑問なのか。
メアリがなぜ、そう思うかに対しての疑問なのか。
「現場には犯人の痕跡が残っていた。血液も、下足痕も――それなのに、事件からひと月が経過したにも関わらず、容疑者すら浮かんでこない。おかしいと思いませんか?」
形の良い唇が言葉を紡ぐ。
メアリの話をこれ以上聞いてはいけない――根津はそんな感覚に囚われた。
先を聞いては後戻りできないと、本能が告げている。
だが、ここまで聞いたのに続きを聞かない訳にはいかない。
答える代わりに緩く首を振った根津をみて、メアリは一度目を伏せた。
最初のコメントを投稿しよう!