第1幕 雨

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 納骨の日も雨だった。  涙のような雨が注ぐ中、骨だけになったまゆみを抱き、根津は納骨堂へ向かっている。  一足先に、墓地にはメアリがついていた。  傘もささずに佇むメアリ。  涙を洗い流すように、雨は強くなっていく。  根津の姿を捉えたメアリはゆっくりとした足取りで近づいてきた。 「彼女――まゆみさんは返ってこないけれど、事件の犯人に復讐がしたいですか?」  ザアザアと雨音が強くなるにも関わらず、メアリの言葉は根津の耳にはっきりと届いた。 「犯人、捕まらないですよ。このままじゃ」  冷たく響く声は、雨粒さえも凍らせそうな温度で。  根津には、今のメアリが葬儀の時とは別人に感じられた。 「どうして……」  それは犯人が捕まらないと言うことに対しての疑問なのか。  メアリがなぜ、そう思うかに対しての疑問なのか。 「現場には犯人の痕跡が残っていた。血液も、下足痕も――それなのに、事件からひと月が経過したにも関わらず、容疑者すら浮かんでこない。おかしいと思いませんか?」  形の良い唇が言葉を紡ぐ。  メアリの話をこれ以上聞いてはいけない――根津はそんな感覚に囚われた。  先を聞いては後戻りできないと、本能が告げている。  だが、ここまで聞いたのに続きを聞かない訳にはいかない。  答える代わりに緩く首を振った根津をみて、メアリは一度目を伏せた。
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