10人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
ザアザア――強い横殴りの雨。
止むどころか強くなる空の涙は、メアリの長い髪を伝い滴り落ちる。
濡れた髪は色を奪われたように薄くなり――茶色かった髪の色が落ち、薄暗い中でも輝く程の眩い金髪が根津の目に入った。
「警察は、犯人を突き止めた。その上で庇っているんです」
メアリはくすりと笑いながら言う。
「嘘、だろ」
「いいえ、残念ながら本当のことです。ちゃんと裏も取れています」
驚く根津だが、メアリが断言するのでそれ以上反論できない。
「17歳の少年が犯人だったんです。それも、刑事部長のご子息が」
浮かんでいた笑みはいつの間にか消え、視線は研ぎ澄まされた刃のように鋭く冷たくなっていた。
メアリは、根津の言葉を待っている。
「それが、本当なら……」
警察内部で決まっていたということだ。
根津まゆみの殺害事件はろくに調べられることもないまま、風化してしまうだろう。
「警察が積極的に隠蔽を行っている以上、彼が法の下に裁かれる日は来ないでしょう」
証拠となる血液のDNAデータだって紛失したと言ってしまえば、処分されていてもわからない。
もしかしたら、既に証拠となるものは全てかき消されているかもしれないのだ。
警察を信じたい気持ちが残っているが、彼らの対応をみていた根津はメアリの言うことが正しいように思えた。
頼りになるはずの警察に裏切られていた――そんな思いが根津を支配していく。
最初のコメントを投稿しよう!