第1幕 雨

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「いや、でも、それなら君はどうして……」  メアリはどうしてその事を知ったのだろうか。  根津が疑問を口にすると、彼女はつまらなそうに口を開く。 「警察内部に協力者がいるんです。私、以前は捜査に助言して協力をしていたので。今はむしろ逆ですけど」 「復讐、というのは?」  メアリの答えに納得し、根津は先程メアリが言ったことについて確認しようと聞いた。 「復讐が望みなら、お手伝いしますよ。目には目を、歯には歯を、罪には罪を。犯人には同じ目に遭ってもらいます」  殺人には殺人を――という言葉をメアリは飲み込み、同害報復(タリオ)を宣言する。  それは、犯人に対する静かな怒りであり、死刑宣告のようなものだった。  だが、メアリは「罪には罪を」と言った。  復讐――犯人を殺すために、新たな殺人犯が生まれてしまう。 「大丈夫です。犯人に下るのはですから。あなたがそれを望むのは何も悪くありません」  先程とは真逆の、温かな言葉と優しい表情に根津は頷いた。  それをみて、メアリが微笑む。  いつの間にか雨は上がり、空には虹が掛かっていた。 ◇  そして数日後、ある少年が都内の自宅玄関前で変わり果てた姿で見つかった。  上半身は裸で、喉から腹部まで鋭利な刃物で切り裂かれ、体に詰まっていた臓物は彼を囲むように綺麗に並べられていた。  奇しくも、発見時には雨が降っており、少年は根津まゆみの遺体とで見つかったのだ。
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