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その情報でメアリの方針は決まったと言える。
まゆみから受けていた相談――そして、現場に残された『私を見て』というメッセージ。
それに答えるように『Found you』という言葉を、彼――若柴海離に突きつけたのだった。
◇
ぽつり、ぽつり――雨粒が乾いたアスファルトに染み込んでいく。
眩い金髪に雫を落とし、星を宿した瞳は敵の姿を捉えていた。
表札の掛かった立派な門をくぐり、玄関前で相対した敵はふた月ほど前に見た少年だ。
カフェでメアリと会話をしていたまゆみを、見張るようにじっと見つめていた彼。
若柴海離は、どこにでも居そうな普通の高校生だった。
その手に持っている鋭利な刃物を除けば。
「こんにちは」
メアリが声を掛けるが当然返事はない。
怪訝そうな顔も見せず、無表情で彼女を見つめている。
「根津まゆみさんの件でお話を聞きに来たのよ」
まゆみの名前をだしても、海離の顔色は変わらない。
メアリは探るように彼の瞳を覗き込む。
「ああ、マユ先生って言った方が……」
わかりやすいかな――と続けようとしたメアリの喉に刃物が突きつけられる。
海離は挑発に乗ってきたようだ。
マユ先生というのは、まゆみの勤めていた学習塾で生徒たちに呼ばれていた名前だ。
鏑木の調べにより、海離の友人が彼女の担当だっただけで、直接の繋がりはなかったということがわかっていた。
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