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ページを捲る根津の心中は複雑だった。
警察の隠蔽により法で罰せない犯人が亡くなったのは、被害者遺族としては喜ぶべきことなのかもしれない。
しかし、好奇の目に亡き妻が晒されるのは避けたかった。
週刊誌と缶コーヒーを手にレジに向かう。
会計を済ませた根津は、メアリに電話をかけた。彼女の思惑を知るために。
電話に出たメアリは、あって話をすることを提案してきた。
根津も落ち着いて話が出来た方がいいと思い、承諾した。
メアリに指定された場所は、ある高級ホテルの一室だった。
コンシェルジュに案内されて、室内に入ると明かりはついておらず、代わりに蝋燭の火が揺らいでいる。
室内にはメアリの他に、一組の男女の姿があった。
何かの儀式のような雰囲気に、根津は思わず息を飲む。
「こんばんは、根津さん。今明かりをつけるわね」
メアリが手元のリモコンを操作すると、室内が一気に明るくなった。
LEDの作り出す人工的な光に照らされ、黄金細工の髪が煌めく。
「どうぞ、こちらへお掛けください」
後ろに控えていた女性が根津に声をかける。
彼は促されるまま、革張りのソファーに座った。
根津の向かいにはメアリが座り、その後には鏑木が立っている。
「京子さん、ありがとう」
テーブルにコーヒーを運んできた女性に対し、メアリが声をかけた。
京子と呼ばれた彼女は、微笑んで会釈し鏑木のとなりに移動した。
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