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俯いたまま、メアリは口を開く。
「この世界に救いなんてない。だからこそ、求める人に救いを与えなければならない。私はそう思っているの」
「たとえ、その為に自ら罪を犯したとしても……?」
根津の言葉にメアリは顔を上げた。
見開かれた瞳の中で星が揺れる。
「生まれた瞬間から罪人なのだから、今さら罪を重ねたところで変わらないわ」
そう告げたメアリは、全ての罪を憎んでいるように見えた。
しかし、彼女が自ら歌うのは復讐の代行。
――目には目を、歯には歯を、罪には罪を。
犯罪者を裁くためには、彼らと同じ犯罪者にならなくてはならない。
そんな考えがメアリのなかにはあるようだ。
「殺人犯を裁くために、殺人犯になった?」
根津が思い付いたことを口にする。
しかし、メアリは首を振って否定した。
「私は別に復讐のためだけに殺人を犯した訳じゃないの」
メアリの言いたいことが、根津には理解できない。
「専務、ニュースを」
しかし、それ以上説明することなく、鏑木に視線を移した。
頼まれた鏑木がテレビのリモコンを操作する。
場の雰囲気に合わない、バラエティー番組。
しかし、その画面の上――ニュース速報を見て根津は息を飲む。
テロップには『警察の不祥事が明らかに!? 刑事部長が辞任』と流れている。
そして、すぐに画面が切り替わった。
『番組の途中ですが、内容を変更して放送させていただきます』
男性アナウンサーが告げ、警察による証拠の隠蔽、改竄があったと明らかになったことが報道される。
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