第1幕 雨

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 俯いたまま、メアリは口を開く。 「この世界に救いなんてない。だからこそ、求める人に救いを与えなければならない。私はそう思っているの」 「たとえ、その為に自ら罪を犯したとしても……?」  根津の言葉にメアリは顔を上げた。  見開かれた瞳の中で星が揺れる。 「生まれた瞬間から罪人なのだから、今さら罪を重ねたところで変わらないわ」  そう告げたメアリは、全ての罪を憎んでいるように見えた。  しかし、彼女が自ら歌うのは復讐の代行。  ――目には目を、歯には歯を、罪には罪を。  犯罪者を裁くためには、彼らと同じ犯罪者にならなくてはならない。  そんな考えがメアリのなかにはあるようだ。 「殺人犯を裁くために、殺人犯になった?」  根津が思い付いたことを口にする。  しかし、メアリは首を振って否定した。 「私は別に復讐のためだけに殺人を犯した訳じゃないの」  メアリの言いたいことが、根津には理解できない。 「専務、ニュースを」  しかし、それ以上説明することなく、鏑木に視線を移した。  頼まれた鏑木がテレビのリモコンを操作する。  場の雰囲気に合わない、バラエティー番組。  しかし、その画面の上――ニュース速報を見て根津は息を飲む。  テロップには『警察の不祥事が明らかに!? 刑事部長が辞任』と流れている。  そして、すぐに画面が切り替わった。 『番組の途中ですが、内容を変更して放送させていただきます』  男性アナウンサーが告げ、警察による証拠の隠蔽、改竄があったと明らかになったことが報道される。
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