第1幕 雨

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 罪を犯した息子を庇った結果、彼自身が息子殺しの容疑で捕らえられてしまった。  警察の上層部としては、これ以上騒ぎにならないうちに終わらせようとしているようだ。  同じような内容が繰り返される記者会見。  メアリが視線を向けると、鏑木はリモコンを操作してテレビを消した。  音が消え、訪れた沈黙が重い。 「根津さん、移動しましょうか」  メアリに促され、根津は悩みながらも彼女のあとに着いていく。  鏑木夫婦はその場から動く気配はない。  最上階の屋上バルコニーは、静寂に包まれていた。  都会の喧騒もどこか遠くに感じられる。  雨の匂いと夜闇と静寂――根津の心そのものだった。  夜風がメアリの長い髪を撫でる。  明かりの下で煌めく黄金も夜闇に紛れ、輝きを失っていた。 「あなたの望みは叶ったかしら?」  金細工で彩られた星が揺れる。  メアリは『死者は帰ってこないけど、復讐ならできる』と言った。  復讐を口にしたのはメアリで、同害報復を実行したのも彼女だ。 「まゆみさんのストーカーだった犯人は、歪んだ愛情を(つの)らせていた」  二人の間に面識はなかった。  彼の一方的な憧れが募り、やがてそれは歪んだ愛情になった。 「刃物を持って脅かすつもりだった。結婚していたのもお腹に子供がいるのも知っていてなお、自分の方を向いてほしいと願ってしまった」  抑えきれない感情が溢れた結果、最悪の形で爆発することになる。 「脅かすだけのつもりで、自分の存在を知って欲しくて……」
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