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罪を犯した息子を庇った結果、彼自身が息子殺しの容疑で捕らえられてしまった。
警察の上層部としては、これ以上騒ぎにならないうちに終わらせようとしているようだ。
同じような内容が繰り返される記者会見。
メアリが視線を向けると、鏑木はリモコンを操作してテレビを消した。
音が消え、訪れた沈黙が重い。
「根津さん、移動しましょうか」
メアリに促され、根津は悩みながらも彼女のあとに着いていく。
鏑木夫婦はその場から動く気配はない。
最上階の屋上バルコニーは、静寂に包まれていた。
都会の喧騒もどこか遠くに感じられる。
雨の匂いと夜闇と静寂――根津の心そのものだった。
夜風がメアリの長い髪を撫でる。
明かりの下で煌めく黄金も夜闇に紛れ、輝きを失っていた。
「あなたの望みは叶ったかしら?」
金細工で彩られた星が揺れる。
メアリは『死者は帰ってこないけど、復讐ならできる』と言った。
復讐を口にしたのはメアリで、同害報復を実行したのも彼女だ。
「まゆみさんのストーカーだった犯人は、歪んだ愛情を募らせていた」
二人の間に面識はなかった。
彼の一方的な憧れが募り、やがてそれは歪んだ愛情になった。
「刃物を持って脅かすつもりだった。結婚していたのもお腹に子供がいるのも知っていてなお、自分の方を向いてほしいと願ってしまった」
抑えきれない感情が溢れた結果、最悪の形で爆発することになる。
「脅かすだけのつもりで、自分の存在を知って欲しくて……」
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