第1幕 雨

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 気付いて欲しかった。自分を知って欲しかった――そんな身勝手な欲望が積もり、行動に出た。 「でも、抵抗されて刺してしまった。結果的に命を奪うことになった」  紡がれるメアリの言葉を、根津は暗い顔をして聞いているいる。 「何が悪かったんだろう、わからない――彼は理解できないことが怖くなった。だから、知りたいと思って遺体を開いて中身を見た」  言葉とともに蘇るまゆみの最後の姿。 「綺麗に戻せないから、あえて外に並べた。そしてまゆみさんの血でメッセージを残した。『私を見て』と」  どこまでも自己中心的な行いだった。  彼女は、彼の欲を満たすために殺された。 「まゆみさんへ好奇の目が行ってしまったことは私の配慮不足でした……」  メアリの瞳に浮かぶ星が揺れる。  ――力不足を嘆くように。 「こんな結末なら、根津さん自ら手を下したかったですか?」  残酷な問い掛けをするメアリ。  彼女の言葉に根津は答えられない。 「もし、まだ(かたき)を取りたいと思っているなら、私を殺してください」 「な、んで……そんな……」  突拍子もない言葉に、根津の声が震える。  メアリは答えず、口を噤んだままだ。  根津は直感的にメアリが後悔していると感じた。  俯いたままのメアリにかける言葉を探していると、止んでいた雨が再び降り出す。 「土は土に、灰は灰に、塵は塵に――全て(かえ)るのが(ことわり)だから」
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