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雨が流れることのない涙の代わりに頬を濡らしていく。
「私は復讐の手段として殺人を肯定している。だから、復讐のために私自身が殺されることだって覚悟しているんです」
復讐のために殺人を犯した以上、誰かの復讐のために殺されても文句など言えない――メアリは死を受け入れていた。
「……ません」
根津の言葉は雨音にかき消されてしまった。
虚ろなメアリの瞳と目が合う。
「私はあなたを殺しません!」
雨を吹き飛ばすような声で根津はメアリに言った。
その目には強い意志が感じられる。
「あなたは自分自身が許せないんですね?」
根津の問い掛けにメアリは答えることができない。
「……例え、神があなたを許さなかったとしても、私があなたを許します」
雨音にかき消されそうな声量だったが、根津の声はたしかにメアリの耳に届いた。
思わず見開かれた瞳の中で、再び星が煌めく。
「私は……」
何かを言おうとして、メアリは言葉に詰まり空を見上げた。
彼女の心を潤すように、振り続ける雨。
「ありがとう……そして、ごめんなさい。助けてあげられなくて本当にごめんなさい……」
言葉とともにメアリの頬から雫が落ちる。
ザアザアと振り続ける雨は、水たまりにしゃがみ込んだまま懺悔するメアリの頬を濡らした。
第1幕 『雨』 完
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