第1幕 雨

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「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はマリと申します。ハンドルネームですけど本名のもじりなので……よかったらそう呼んでください」  根津は、ひとまず彼女の話を聞くことにする。  火葬が行われる間、喫茶室に移動して話をすることにした。 「MAYU(マユ)――まゆみさんと知り合ったのは、交流を目的としたSNSでした」  マリが自分のスマートフォンを取り出し、SNSでやりとりした記録を見せる。  最初は『引っ越してきたばかりだから町のことを知りたい』などを話していた。 「この相手は本当にまゆみなのか?」  疑いたくなる気持ちはマリにもわかったので、プライベートな個人チャットの記録を呼び出す。  そこには直接電話で話をしたい旨の言葉と、まゆみのスマートフォンの電話番号が書かれていた。  それに対してマリは『他人に簡単に電話番号を教えるのは不用心ですよ』と答えつつも、今から電話するとメッセージを送っている。 「確かに、まゆみの番号だ……」  電話番号が合っていたため、根津はマリとやりとりがあったことが本当であると確認でした。 「電話で相談を受けました。まゆみさんは若い男に声を掛けられ、それから後をつけられたりするようになったと話していたので……警察に相談するように助言したんです」  マリの話した内容は、根津にとって初耳だ。  まゆみから根津への相談はなく、困っていた様子も見せなかった。 「でも、気のせいかもしれないから――と、警察への相談はしていなかったみたいです」
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