第1幕 雨

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 マリの話が本当なら、まゆみはストーカーに悩まされていた。  しかし、自分の思い違いの可能性も考えて相談できずにいた。 「何でも言ってくれればよかったのに……」  根津の口から零れたのは、後悔を滲ませた言葉だ。  マリはかける言葉もなく、ただ項垂れる根津の様子を見守っていた。  話している間にいつの間にか火葬が終わったらしい。  斎場のアナウンスが拾骨の時間になったことを教えてくれた。  根津もマリも無言のまま、拾骨室へ向かい骨上げを行う。  斎場職員による骨の説明を受けながら拾骨を終えた。 「本日はありがとうございました」  骨壷を抱いた根津が挨拶をし、来客達を見送る。  ちょうどその時、別れを惜しむように雨が降り始めた。  ぽつりぽつり――雨粒がアスファルトに染みを作っていく。  次第にザアザアと強くなっていく雨。 「私の方でも、事件のこと、調べてみますね」  マリの口が動き何か言っているのがわかったが、雨音に書き消され、根津の耳には届かなかった。 ◇  葬式が終わっても、根津は眠れない日々が続いていた。  警察の捜査は続いているものの、進展はないようだ。  何度も近隣住民への聞き込みが行われているが、犯人の目撃情報も出てこない。  まゆみにストーカーが居たかもしれないと警察に伝えたが、スマートフォンの履歴を確認しただけで終わってしまった。  四十九日の納骨を前にしても、犯人について何一つわからないままだ。
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