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マリの話が本当なら、まゆみはストーカーに悩まされていた。
しかし、自分の思い違いの可能性も考えて相談できずにいた。
「何でも言ってくれればよかったのに……」
根津の口から零れたのは、後悔を滲ませた言葉だ。
マリはかける言葉もなく、ただ項垂れる根津の様子を見守っていた。
話している間にいつの間にか火葬が終わったらしい。
斎場のアナウンスが拾骨の時間になったことを教えてくれた。
根津もマリも無言のまま、拾骨室へ向かい骨上げを行う。
斎場職員による骨の説明を受けながら拾骨を終えた。
「本日はありがとうございました」
骨壷を抱いた根津が挨拶をし、来客達を見送る。
ちょうどその時、別れを惜しむように雨が降り始めた。
ぽつりぽつり――雨粒がアスファルトに染みを作っていく。
次第にザアザアと強くなっていく雨。
「私の方でも、事件のこと、調べてみますね」
マリの口が動き何か言っているのがわかったが、雨音に書き消され、根津の耳には届かなかった。
◇
葬式が終わっても、根津は眠れない日々が続いていた。
警察の捜査は続いているものの、進展はないようだ。
何度も近隣住民への聞き込みが行われているが、犯人の目撃情報も出てこない。
まゆみにストーカーが居たかもしれないと警察に伝えたが、スマートフォンの履歴を確認しただけで終わってしまった。
四十九日の納骨を前にしても、犯人について何一つわからないままだ。
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