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『鏑木です。アウグスタ・メアリ、今、お話ししても大丈夫ですか?』
マリ――メアリに電話をかけてきたのは、彼女が今メッセージを送った相手、専務こと鏑木だ。
彼はメアリを尊厳者と呼ぶ。
「お願いします」
メアリが答えると、鏑木は小さく息をついて話し始めた。
『先程、頂いた画像の少年ですが、いつどこで撮られたものでしょうか』
「一週間ほど前、駅前のカフェ付近です。被害者とそこで会って話をした時、こちらを窺っている不審な子がいたので隠し撮りました」
『隠し撮りは誉められたことではありませんが、この少年は被害者に付きまとい行為をしていた可能性があるんですね』
そう、まだあくまで可能性の話だった。
「確認しようにも、根津まゆみさんは既に亡くなっていますから……」
『この少年、おそらく私も知っている人物です』
「え……」
鏑木の言葉にメアリは驚く。
スマートフォンを取り落としそうになり、慌てて両手で掴んだ。
『大丈夫ですか、アウグスタ』
電話越しに心配そうな声が届く。
メアリの慌てた様子が伝わったらしい。
「大丈夫。それよりも詳しく教えて」
『わかりました』
そう答えたものの、鏑木は何から話をしようか迷っているようだ。
少しの沈黙のあと、彼は重たい口を開いた。
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