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『既にお気付きかもしれませんが、彼は警察関係者……それも、上層部の人間の子供です』
警察の上層部の家族――もし彼が犯人であるなら、犯行に繋がる証拠が隠蔽されている理由になる。
その事実を聞いてもメアリの顔色は変わらなかった。
『直接会ったのは一度きりですが、影のある子だったのでよく覚えています。確か、彼の通う学校の最寄り駅は――』
鏑木が教えてくれた駅は、まゆみがよく利用していた駅だ。
仮説が段々と確信へ変わっていく。
「わかった。ありがとう」
メアリはそう言って一方的に通話を終了した。
彼女にとって必要な情報があれば、追加でメッセージがくるだろう。
「ねぇ、あなたは根津まゆみさんを殺した時、どんな気持ちだった?」
メアリは画像の少年に問い掛ける。
もちろん、答えは返ってこない。
「自分は捕まらないと思ってる? 裁かれないと思ってる? 本当に、逃げられると思っているの?」
カッ――と空を裂くような光が落ちる。
同時に、強い雨が降りだしたようだ。
窓を叩く雨音に、雷鳴が答えるように響く。
「灰は灰に、塵は塵に、土は土に――全ては御元に還らん。遺されたものには情けを……」
呟くように、小さく小さく唱え、メアリは手を合わせる。
「罪深き者には裁きの刃を」
呟いたメアリの顔が鏡に映りこむ。
そこにあったのは、神をも殺しそうな狩人の鋭い瞳だった。
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