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「間に合わない。ていうか、興味ない」 断言した。前半部分には、根拠も何もなかったけれど。 「そっか」 鶴田はカボチャを「よっ」と持ち直して、クルリと私に背中を向けた。 その背中を、私の顔と交互に見比べながら、友人が名残惜しそうに見送った。 「もー! やっちん! あれは誘ってたんだよー! 察してやりなよー!」 「いやいやいや違うでしょ。誘うならそれらしい台詞吐きなさいよ」 「だってやっちん、頭から拒絶してるもん。あれじゃ誘えないよー」 「だって本当に、私には関係ないイベントだもん」 私には恋人はもとより、好きな人さえいない。 私だって女子高生だし、恋愛に興味がないわけじゃないけれど。 要は、誰か特定の男子を深く知るきっかけもなければ、そういう時間を作る器用さもないだけだ。 いいや、それは見苦しい言い訳。 やっぱり私には、好きの定義が分からない。 もう一度、鶴田の姿を探してみた。 カボチャを被って、歩行練習していた。 危なっかしい足取り。 あんなので接客出来るのかな。 「鶴田、カッコいいと思うよー? 背も高いし、韓国のボーカルグループに入れるレベル!」 「よく理解出来ない」 「ほらー、隣のAのやっかましい連中いるでしょー? いっつもポニーテールわざと大きく揺らして歩く女がリーダーの! あいつら、鶴田狙ってるって噂だよ」 「……知らない」 「あいつらにとられるなら、やっちんの方が数万倍いいのに!」 「……とるとかとらないとか、ねぇ」 「もーいいっ! 私が狙うからっ!」 「あははっ、好きにしなよ」 既に彼氏のいる友人のお尻を、もう一度軽く叩いた。 鶴田は相変わらず、フラフラ歩いていた。  
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