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1週間はあっという間だった。 秋の晴天の元、我が高校の文化祭は始まった。 午前9時からの開催だと、喫茶店である私達のクラスは、前半はきっと暇だろうと践んでいたのに。 仮装がウケたのか、開店と同時にお客さんが怒濤のごとく押し寄せた。 裏方の私も、ただ傍観というわけにいかず、発生したゴミの片付けや、足りないお皿の手配に走り回る。 午後が近づくと、忙しさはピークに達した。 人に酔いそう。 猫の手も借りたい。 もう、教室のどこで誰が何をしているかなど、把握出来る状態ではなかった。 結局午後のメンバーとの交代も、忙しさのせいでままならず。 見かねた私は、とりあえず繋ぎで入っては、ひとりひとりを交代させていった。 「やっちんありがとーう! 何気に一番活躍してるよホント。みんなも褒めてたー!」 「……むり。話し掛けないで。酸素の補給が必要だから」 労いの言葉にさえ、満足に答えられないほどだった。 午後3時を回った頃。 運動場へ集合する学生が増えたことで、ようやく教室が落ち着いた。 ざっと辺りを見渡して、オーダーストップの看板を掲げるよう指示を出す。 お客の具合を確認しながら、そろそろ後片付けを始める頃合いだ。 「後片付け、私手伝う!」 そんな私の気配を察してか、友人が魔女のまま駆け寄ってきた。 「いいよ、ひとりで平気だから。今年のバンドは2年の有志らしいし、みんなで盛り上がってきな」 「……うーん。まあ、ホント言うと私も彼氏と約束してるっちゃしてるんだけど」 うん、知ってるよ。 だから楽しんできてって言ってるのに。 気持ちは物凄く嬉しいし、口先だけじゃないことも、ちゃんと分かってるんだから。 私は、手伝ってもらうよりも、彼氏と寄り添うことを、心から望んでいる。 「堪らなくなったら、助太刀頼むから。とりあえずライヴね」 「……うん、分かった。絶対よ、やっちん。窓から叫んでね?」 「あははっ、届くかな。何て叫べばいいの?」 「ヘルプミーッッ!!!」  
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